2026年春、伊丹=新千歳にファーストクラスが新設された

日本航空では2026年春ダイヤから、大阪(伊丹)=札幌(新千歳)線に新たにファーストクラスを設定・販売開始した。(2026年度 JALグループ路線便数計画(国内)を決定)
これは単なるダイヤ改定の一項目ではなく、「ファーストクラス設定路線の全国拡大」という中長期方針を打ち出す中で、全国拡大の流れを象徴する追加路線のひとつとして選ばれた路線が伊丹=新千歳だと考える。販売開始は2026年1月21日。新千歳という北海道の玄関口と、関西の主要空港である伊丹を結ぶこの路線に、ファーストクラスが乗り入れたことの意味は大きい。大阪在住のYujiにとって、この伊丹=新千歳線でのファーストクラス導入は非常にうれしい発表。
そして今回の搭乗は、さらに特殊な意味合いを持っていた。
2026年4月から、JALは国内線サービスの大規模リニューアルを順次実施した。その中で、国内線ファーストクラスでは、上着預かりの廃止、森伊蔵の提供終了、短距離路線への弁当スタイル導入——。改定内容を見たとき、私の頭に浮かんだのは「削減」という言葉。
2026年4月。私が搭乗したのは、伊丹→新千歳を結ぶJL2019便。
つまり今回のフライトは、「就航から間もない新設ファーストクラス路線を、サービス改定直後に乗る」という二重の意味を持つ実験搭乗になった。羽田→伊丹で改定直後の1本目を体験したばかりの私が、この便に乗る前に自分に問いかけたことはひとつだけだ。
「まだファーストクラスの歴史の浅い新設路線でも、ファーストクラスの手触りはちゃんと成立しているか」
その答えは、伊丹の専用カウンターに足を踏み入れた瞬間から、静かに積み上がり始めていた。
この記事の結論
- 搭乗便: JL2019 伊丹→新千歳
- 総合評価: 3便乗り比べの中で、もてなしの濃さと食後の余韻が最も充実した便
- 良かった点:地上導線のスムーズさ・ダイヤモンド・プレミアラウンジの落ち着き・CAのもてなしの濃さ・
フルサービスの機内食・食後にゆっくりお酒を楽しめる時間の余裕- 惜しかった点: 森伊蔵の消失・上着預かりの廃止
- 向く人: 食事・お酒・ファーストクラスでのひとときまで含めた体験全体をゆったり楽しみたい人
- 注意したい人: 改定前の儀式感・重厚感を期待して乗る人
伊丹空港の地上体験 ―羽田とは違う”素直な”プレミアム感
羽田を起点にしていると気づきにくいのだが、伊丹空港のファーストクラス地上体験には、独特のスムーズさがある。
タクシーやバスなどで伊丹空港へ到着した方はターミナルへ入場後2階へ上がるとすぐそば、大阪モノレールにて到着した方は連絡通路で直接同じフロアでつながっている所に用意されている専用チェックインカウンターエントランス。ファーストクラス専用チェックインカウンターに向かうと、混雑はほぼゼロに近い。
担当スタッフの対応も丁寧で、手荷物を預けてから保安検査場を通過するまでの流れが引っかかりなく進んでいく。2026年4月現在リニューアル工事中の羽田空港北ウイングのように工事中の導線やラウンジ振替を気にしなくていいぶん、出発前から気持ちが整いやすい。ここから先は「上質な旅の時間が始まる」という感覚を、素直に受け取れる。
この「入口の素直さ」は、伊丹ファーストクラスの隠れた大きな魅力だと私は思っている。到着して、カウンターを通って、保安検査をくぐる。その3ステップが、いずれも引っかかりなく流れていく感覚は、一種のラグジュアリーだ。旅の”前菜”の段階から、この便はすでに満足感を静かに積み上げ始めていた。
ダイヤモンド・プレミアラウンジ ―落ち着きと、大阪らしさが同居する空間
保安検査を抜けた先のエレベーターを利用し、伊丹のダイヤモンド・プレミアラウンジへ向かう。
羽田のそれに比べてコンパクトながら、落ち着いた雰囲気が際立っていた。混雑が少なく、ゆったりしたペースで過ごせる。窓からは滑走路が見え、離発着する機体の動きが自然と目に入ってくる場所だ。私は出発前のしばらくの時間、ただそれを眺めていた。
目的地へ向かう飛行機が視界に入るたびに、旅への高揚感がじわじわと高まっていく。食事や飲み物だけではなく、「旅の始まりの空気」を味わえる場所であること。搭乗前の時間が「待機」ではなく「旅の序章」として機能する場所——それが伊丹のダイヤモンド・プレミアラウンジだ。
軽食のラインアップには、たこ焼きパン、伊予柑パン、おこわといった、大阪らしい独自色があった。羽田のラウンジにはない素朴な面白さがあって、「ここにしかない味」として素直に楽しめる。補充のタイミングによっては品切れもあるが、それも含めて空港の個性だと受け取れる範囲。
なお、このダイヤモンド・プレミアラウンジは今後「JALファーストクラスラウンジ」へと名称変更が予定されています。羽田では2026年秋からのリニューアルにあわせて変更が予定されており、伊丹を含む各空港も随時対応していく方針。名称とともに、体験そのものがどう進化するかにも注目していきたい。
この日のラウンジは空いていた。静けさのなかで、コーヒーを飲みながら窓の外の機体を眺める。混み合う羽田とは異なる、この静かな上質さ——伊丹発のJALファーストクラスが持つ価値は、こんなところにも確かにある。
搭乗口15番 ―優先搭乗の実態、正直に書く
本日の搭乗口は15番。搭乗開始は18時20分の予定で、実際にアナウンスが流れたのは18時23分だった。
伊丹=羽田線のようなグループごとの列の形成はなく、案内ごとに搭乗客がゲートへと向かうスタイル。ファーストクラス搭乗者はグループ1として優先搭乗を受ける。
グループ1の搭乗開始のアナウンスが入るが、該当旅客は少ない印象。ひとつ前に搭乗した羽田=伊丹線とは搭乗客層は大きく違いそうだ。
そして肝心の機内に入ってからの話に移ると、印象はさらに一変する。
機内へ ―CAのもてなしが、制度の不足を丸ごと埋めてしまった

機内に足を踏み入れた瞬間から、空気が変わった。
乗り込んだ直後、CAさんが一人ひとりに挨拶をしに来る。その挨拶がマニュアル的な型ではなく、ちょっとした雑談を交えた温度感があった。「今日はどちらからいらっしゃったんですか」「千歳便は初めてですか」——そういった、サービスの型の外にある会話が、ファーストクラスらしさの核心だとあらためて感じた。ちょっとした裏話まで交えてくれるくだり方は、その便ならではの空気をつくっていた。単なるマニュアル対応では出せない温度がある。
今回のJL2019便は、ファーストクラスの客室対応が実質的に2名体制だった印象がある。搭乗率2/5席という余裕も手伝って、客室全体にゆったりとした空気が漂っていた。
「特別な存在として扱われている」感覚は、これだと思う。
近すぎず、離れすぎず。こちらが何かを必要としたときに、自然にそこにいてくれる。言語化しにくいけれど、確かにある温かさ。羽田→伊丹便と比べても、この便のもてなしの濃さは明確に上回っていた。それはサービス項目の数で測れるものではなく、CAさんが作り出す空気感の話だ。新設路線だからといってサービスが薄いわけではない——むしろこの便に限っては、逆の印象すら受けた。
JALファーストクラス サービス改定の現実 ―上着預かりが消えた日
さて、ここで正直に触れなければいけないことがある。
2026年3月31日をもって、JAL国内線ファーストクラスの「上着お預かりサービス」が正式に終了した。
今回の搭乗は4月上旬——改定後の体制がそのまま適用された、初期の便だ。
実際に乗ってみると、やはり上着は預かってもらえなかった。歓迎の空気が濃いぶん、この一点の喪失はむしろ際立って見える。
コートやジャケット類の置き場所が快適性に直結する場面は少なくない。特に今回のように、温暖な大阪から雪の残る新千歳へ向かうフライトでは、その落差は実務的に大きい。折り畳んで荷物棚に入れるか、膝の上に置くか——どちらも、上着を”荷物扱い”する感覚になる。
上着を預かってもらい、着陸前にそっと返してもらう。あの一連の所作に込められていたものは、単なる利便性ではなかった。「あなたの旅の細部まで、私たちが整えます」というメッセージだったのだと、なくなって初めて気づく。サービスの価値は、あるときよりも消えたときのほうが、くっきりと見えてくることがある。
新設路線でサービスが拡充された一方で、こうした”所作の削除”が同時に起きている。その複雑さを、正直に書いておきたい。
機内食・フルサービス ―短距離便では得られない、「食事の時間」がここにある
今回のJALサービス改定では「短距離路線=弁当スタイル、長距離路線=トレースタイル継続」という方針が打ち出された。
伊丹→新千歳は長距離路線の扱いで、フルサービスが継続している。これが、この路線をファーストクラスで選ぶ大きな理由のひとつになる。
羽田→伊丹のような短距離便では、ベルトサイン消灯からサービス終了まであっという間だ。食事が終わり、コーヒーを一口飲んだところで着陸態勢に入る——そういう慌ただしさが、どうしてもある。だが伊丹→新千歳では、その慌ただしさがない。食事が終わっても、時間はまだたっぷり残っている。
シートベルトサインが消灯してから5分、CAさんが静かに食器を運んできた。
今回いただいたメニューはこちら
アペタイザー
- 土佐はちきん地鶏のコンフィ
マンゴーゼリー 仁淀川山椒 - サーモンのマリネ 柚子のジュレ
キヌアサラダ
メイン
- 国産牛のハンバーグ トマトソース
そら豆とポテトのグラタン クルミ スピナッチ
- プチパン
- バター
茶菓
- ミルクスターサンド りんご/MILK STAR
まず、食器が出てきた時点で安心感があった。ちゃんと温かいものが温かく提供されて、食器の上にきちんと盛られている。湯気とともに漂ってくる香り——それだけで、このフライトが「ちゃんとフルサービスの体験」であることが伝わってきた。食事の内容はしっかり整っていて、短距離の「合理化された食事」とは質感が明確に違う。ちゃんと食事の時間として成立していた。
そしてここからが、この路線ならではだ。
食後にはおつまみも提供され、2杯目・3杯目の飲み物もCAさんがさりげなく声をかけてくれた。19時38分にサービス終了のアナウンスが流れたあとも、余韻の時間がしっかり残っていた。食事を終え、お酒をゆっくりもう一杯傾けながら、窓の外の景色をぼんやり眺める——その時間が、このフライトには確実にある。
これは羽田→伊丹では得られない時間だ。伊丹→新千歳というフライトタイムだからこそ成立する、食後の余裕。この余白こそが、ファーストクラスに乗る体験の本質に最も近いものだと私は思う。
JALオリジナル焼酎「鶴空」 ―食後のゆったりした時間に、個性ある一本を
ドリンクについても触れておきたい。
2026年3月31日をもって、JAL国内線ファーストクラスでの森伊蔵の提供が終了した。長年この路線の”象徴”のひとつとして親しまれてきた銘柄が消えたことは、搭乗経験のある人ほど明確に「何かが変わった」と感じるはずだ。
そのなかで今回手に取ったのが「鶴空」だ。JALグループ自社農園「JAL FARM」で栽培された紅あずま・紅はるかを含む千葉県産さつまいもで作られたオリジナル芋焼酎で、いわばJALの”自社焼酎”という位置づけの一本だ。(JAL国内線ファーストクラス お飲み物ページ)
飲んでみると、思っていた以上に個性がある。香りにはっきりとしたクセがあり、芋焼酎らしい飲み口がしっかり前に出てくる。好みがはっきり分かれる一本で、万人向けではないかもしれないが、その分だけ印象には残る。
そしてここで改めて感じたのが、伊丹=新千歳という路線の時間的な豊かさだ。食後にお酒をゆっくり楽しもうとしたとき、羽田→伊丹ならもう着陸態勢に入っている時間帯でも、この便ではまだ余裕がある。グラスを傾けながら、CAさんと少し言葉を交わしながら、窓の外に広がる夜の雲を眺める——そういう時間の使い方が、この路線では自然にできる。
ファーストクラスの機内でお酒を「急いで飲む」のと「ゆっくり楽しむ」のとでは、体験の質がまるで違う。森伊蔵という圧倒的なブランドがなくなった今、鶴空がJAL国内線ファーストクラスの”焼酎の顔”になっていく。それ自体は悪いことではない。ただ、森伊蔵が持っていた「幻の焼酎を、空の上でゆっくり飲める」という体験価値は、代替の効かないものだったとあらためて感じた。
降下から着陸へ ―雪の新千歳が教えてくれたこと
19時50分、ベルトサインが点灯した。
降下を始めると、窓の外に雪が舞っているのが見えた。伊丹を出発したのがつい1時間半ほど前だというのに、到着地の空気はまるで別の季節のようだ。白く霞む視界の先に、新千歳の滑走路が静かに広がっている。機内の温かな空気と、窓の外に広がる雪景色のコントラストが、このフライトの記憶をいっそう鮮明にした。
そのとき、ふと頭をよぎったのが上着のことだった。
コートを持っていた。でも今回は、折りたたんで荷物棚に入れたまま降りることになる。かつてなら、ベルトサインが点灯する5分前を目安に、CAさんがそっとコートを返しに来てくれた。そのとき「ああ、もうすぐ着くんだな」と気づき、旅の終わりに向けて心の準備ができた。
それがなくなった今、コートを荷物棚から取り出すのは着陸後に自分でやる作業になった。たったそれだけのことだ。でも、その「たったそれだけ」が、旅の終わりの余韻に影響する。機能的なサービスと感情的なサービスの違いは、こういう場面でじわりと浮かび上がってくる。
20時14分に着陸。20時19分にブロックイン、ベルトサイン消灯。20時23分に降機が始まった。
最後のCAさんの挨拶は、搭乗へのお礼と「北海道をお楽しみください」という一言だった。それだけなのに、フライト全体を通じて積み上がってきた体験があるからこそ、その言葉がちゃんと心に届いた。慌ただしさよりも満足感のほうが、圧倒的に強く残った。
フライトログ
| 搭乗予定時刻 | 18:20 |
| 搭乗案内(グループ1・優先搭乗) | 18:23 |
| 扉閉鎖 | 18:35 |
| プッシュバック開始 | 18:37 |
| 32L滑走路から離陸 | 18:48 |
| シートベルトサイン消灯 | 18:55 |
| 機内食サービス開始 | 19:00 |
| サービス終了アナウンス | 19:38 |
| ベルトサイン点灯 | 19:50 |
| 着陸 | 20:14 |
| ブロックイン・ベルトサイン消灯 | 20:19 |
| 降機開始 | 20:23 |
まとめ ―新設路線でも、体験はちゃんとファーストだった
今回のJL2019、伊丹→新千歳のJALファーストクラス体験を一言で表すなら、「制度は引き算、でも体験はまだちゃんとファースト」だ。
そしてもうひとつ付け加えるなら、「この路線でしか得られない時間がある」。
羽田→伊丹のような短距離便では、食事が終わればすぐに着陸が始まる。しかし伊丹→新千歳では、食事が終わっても時間はまだある。食後にお酒をゆっくりもう一杯楽しんで、CAさんと少し言葉を交わして、窓の外を眺めながら旅の気分に浸れる。その余白こそが、ファーストクラスに乗る体験の本質に最も近いものだと私は思う。
変わったもの——上着預かり、森伊蔵の提供、搭乗時の演出の重み。変わらなかったもの——地上導線の丁寧さ、ダイヤモンド・プレミアラウンジの落ち着き、CAのもてなしの芯、フルサービスの食事、そして食後にゆっくりお酒を楽しめる、この路線だけが持つ時間の余裕。
JAL ファーストクラス 伊丹 新千歳の搭乗を検討しているなら、今の体制でも十分に価値ある体験ができると思う。特に、食事とお酒を含めたファーストクラス体験をゆったり楽しみたい方に、この路線は今も強くおすすめできる。新設路線だからこそ持つフレッシュな空気感と、長距離路線だからこそ生まれる時間の豊かさ——その両方が、JL2019にはあった。
なお、今回のフライトの前に搭乗した羽田→伊丹のファーストクラス体験記も公開している。2便を比較しながら読んでいただくと、JAL 国内線 ファーストクラス 2026の改定がもたらした変化と、この新設路線が持つ独自の価値がより鮮明に見えてくると思う。













